筑波大学特別講演会のお知らせ

筑波大学特別講演会のお知らせ

6月22日(木)の17時より、沖縄科学技術大学院大学教授の柳田充弘先生による特別講演会「人の老化度は “分子的に” 測定できるか?」が開催されます。

日時:平成29年6月22日(木)17時00分~18時15分
会場:医学エリア 臨床講義室A

[地図] 講師:柳田充弘教授(沖縄科学技術大学院大学 G0細胞ユニット)
演題:人の老化度は “分子的に” 測定できるか?

要旨

高齢化社会を迎えた我が国はいかに人の老化に向き合うか、医療のみならず社会的にも大きな課題であろう。一方で長寿の質、つまり健康長寿の重要性もますます認識されつつある。生命科学に長年携わったものとして、長寿と老化の研究に貢献するのも一つの責務と考えてきた。われわれのOISTでの研究室と共同研究をする京大医学部での研究は一つの素朴な疑問から出発した。すなわち、人の老化度は容姿や身体能力測定からでも容易に推測しうるのに、現今の生命の分子の科学はかくも進んだのに、老化度の分子的な’ものさし’が存在しないのはなぜか?この一般の人々からみれば予想外の困難な課題に、われわれは血液メタボライトに着眼して研究をおこなってきた。血液は全体重の7%程度も占めており、血液中に存在するメタボライトは身体状況を’分子的に’反映しているだろう。そこで、われわれは全血液、血漿と赤血球の網羅的な定量メタボローム解析法の確立に努めた。約130の血液メタボライトの大半は分裂酵母にも存在したので、代謝の突然変異体を利用してメタボライト量を人為的に変動させて定量法の改善に努めた。さらに迅速低温処理により網羅的解析のための試料の‘新鮮さ’を保つことに主眼をおき再現性のきわめて高い結果が得られるようになった。また、血液ドナーを、20代の若者と80代の高齢者の2グループに限定することにより高齢者の特徴を明確に把握しようとした。われわれは、14種の年齢に関与するメタボライトを同定し昨年論文発表した。うち6種は赤血球に富む。健康な高齢者で顕著に低下する9種のメタボライトは抗酸化、酸化還元能もしくは筋力など肉体活性維持に関わるものであった。高齢者で顕著に増加するメタボライトは腎臓、肝臓機能による体外排出機能の低下を示唆するものであった。統計的な解析からは、これらのメタボライトは相互に強く相関する機能的ないくつかのサブグループに分類された。さらに解析を続けることにより新規の老化の物差しとなるメタボライトが続々と見いだされつつある。 これまでの成果をまとめると、老化の原因は若さ維持に必要なコンパウンド活性を喪失することと、若いときには蓄積しないメタボライトが老化進行により溜まってしまうことに二大別された。今後の研究は、別の様々な身体機能(脳機能など)の老化、また老化関連疾病(例、アルツハイマー)について進行度を測るための診断マーカーの発見や老化の前駆現象を把握して予防医学の発展にも努めたい。さらにこれら老化のものさしとなるコンパウンドを健康科学や医療に利用するための技術開発に努めたい。

2018-05-17T16:31:13+00:002017/06/20|お知らせ|